★ エイプリルガイ・フォーエバー ★
クリエイター橘真斗(wzad3355)
管理番号101-8435 オファー日2009-06-27(土) 01:07
オファーPC 梛織(czne7359) ムービースター 男 19歳 万事屋
ゲストPC1 神宮寺 剛政(cvbc1342) ムービースター 男 23歳 悪魔の従僕
ゲストPC2 桑島 平(ceea6332) エキストラ 男 46歳 刑事
<ノベル>

〜ツッコミ人に休息はない〜
「そういや、今年は平和だな?」
 銀幕市で大きな騒動があるなか、久しぶりの休息を味わっていた神宮寺 剛政は隣で歩く梛織に声をかける。
「ネガティブゾーンやマスティマ騒動があって十分荒れていただろうに何を言ってるんだよ」
 梛織はじとーっとした目で剛政を見上げた。
 事実、万事屋の仕事には事欠かず報酬ももらえてこうして剛政と買い物にもでているのである。
「違うって、ほらアレだ。アレ!」
「アレじゃわかんねーよ。ボケてるのか、どこの詐欺だよ」
 人差し指を額に当てたり話したりして何かを思い出そうとしている剛政に梛織のツッコミがとんだ。
「俺はまだボケる年なわけないだろ‥‥そうだ、エイプリルガイだ」
「あーあーあの桜色のラメレザー服を着ていたあいつか‥‥元々次期ハズレな奴だったから忘れていた」
 剛政に突っ込みを返された梛織はようやく思い出す。
 過去2回、エイプリルフールに来るはずだがお馬鹿で遅れて来ているという奇妙な設定でゴリゴリの男が好きという変質者的ムービースターエイプリルガイのことを‥‥。
「今年は本当に見ていないな‥‥」
 懐かしむ一方で思い出したくもない、なまめかしい腰の動きで剛政を誘っていたエイプリルガイの姿が梛織の頭を支配する。
「去年は二人だったから今年は3人になっていたりしてな?」
 剛政のその一言に梛織は身震いをした。
 想像するだけでも恐ろしい。
「冗談でもやめてくれよな、そういうの‥‥」
「おいっ! そこの二人! 丁度いい、手を貸してくれ!」
 梛織が頭を振って嫌な想像を消していると、桑島 平が息を切らせ阿修羅や仁王像のような顔で走ってきた。
「どうしたっていうんだ、桑島さん」
「何かピンクの変なムービースターが現れて普通の警察じゃ手がつけられないんだ。お前ら暇そうだから来てくれ」
「ピンクの変な‥‥」
「ムービースター‥‥」
 桑島がオールバックの頭をがさがさと掻きながら説明をしていると、二人の脳裏には先ほど消したはずの男が再び腰を振りながら浮き出してくる。
「噂をすれば‥‥だな、三度目の正直ってとこで本当に消してやろうか」
「おう、桑島さん案内してくれ!」
 梛織と剛政が決意を新たに走り出した。
「ちったぁ、年配を労われよ‥‥。ところで、お前らそいつと友達なのか?」
「「断じて違うっ!」」
 走ってきたばかりだというのに追い立てられた桑島が二人の背中に疑問をぶつけると綺麗なツッコミが返ってくる。
 遅れに遅れて四月の馬鹿はやってきた。

〜ブレイク、ブレイク!〜
「えいぷりるふぅぅぅる!」
 くねくねと腰を動かしていた男が両手を上げてポーズを取ると信号機がリズムを取って点滅しはじめ、カフェで愛を語っていたカップルが修羅場を迎えだす。
「ああ、お前ら落ち着け! ああ、どうなってんだよ!?」
 混乱を迎えるカフェ前で桑島は頭をかいた。
「また帰ってきやがったな、もう5月だってのによこの野郎!」
 一年ぶりの姿に梛織は思わず顔を綻ばせながら突っ込みをいれる。
「ハーイ、一年ぶりですねぇ〜。でも、私の好みではないですね〜。そちらのゴリゴリさんはますますいい男になって何よりですよ、HAHAHA」
「うるさい! おまえらのため鍛えてるわけじゃねぇよ」
 剛政も第一声に突っ込みを返していた。
「兄ちゃん、あれ‥‥」
 そんな二人を他所に、桜色のラメスーツを着ている小太りの少年が剛政に色目を使っている男を突っつきながら桑島の方を指差す。
「どうしたんですか、ボーイ? あ、あれは‥‥!」
 桑島の方を向いたエイプリルガイはのけぞって足の間から頭を出して驚きを見せた。
「「驚いているのかふざけているのかどっちだ!」」
 当然、梛織と剛政は揃えて突っ込みを入れるが、桑島の方は完全にこの場のノリに1人出遅れている。
「あー、もう少し俺にもわかるように話を進めてくれねぇか?」
 喧嘩をするカップルを宥めていた桑島は状況が読めずに困っていた。
「簡単にいいましょう‥‥会いたかったですよ、ダディ」
 エイプリルガイがポーズを元に戻すと、歯を無駄に光らせて桑島に答える。
「をいこらっ! ふざけたこといってんじゃねぇぞ? 俺はテメェらのようなガキをもった覚えはねぇ‥‥やぁ、会いたかったよマイサン」
 エイプリルガイによる突然の告白に突っ込みをいれようとした桑島だったが、ロケーションエリアを効果か桑島の姿が桜色ラメ男へと変っていた。
「とーちゃーん」
 爽やかにラメ服姿で答える桑島にエイプリルボーイが走りよるも、抱きつく寸前に梛織の足が顔に減り込み蹴り飛ばす。
「三人目を勝手に増やすな! 剛政さん、桑島さんを連れて離れよう」
「いや、昔から壊れたものに対する対処は決まっている‥‥叩けば治る!」
 桑島とエイプリルガイやボーイとの間を立ち回りながら梛織が提案をするも、剛政は静かに目を開けて拳をならせた。
「叩くならお尻に頼むぜ、相棒!」
 ぷりぷりと尻を突き出す桑島に同情を感じるも剛政は容赦なく突き出された尻ではなく頭をガンと殴る。
「ああ、ダディ!」
「父ちゃん!」
「「だから、違うっ!」」
 叩かれて気を失うも姿の戻った桑島に一安心した二人はエイプリルガイとエイプリルボーイに攻撃を仕掛けた。
「くぅ〜、効きますねぇ〜。もっと激しいのをくださいよ!」
「変態めっ! いい加減に倒れろよ!」
 剛政の攻撃を受け止めるも動きを止めないエイプリルガイに剛政は苛立ちながら殴り続ける。
「こっちもシツコイな!」
 エイプリルボーイを相手にしている梛織も中々倒れない相手に苦戦していた。
「壊れたヤツラは‥‥叩けばいんだろうがよ、そらっ!」
 二人が苦労していると、いつものヨレヨレスーツ姿になった桑島が気絶から起き上がりエイプリルガイの頭とエイプリルボーイの頭を後ろから掴んでぶつけあう。
 ゴチンと鈍い音が起きて二人はよろめいた。
「お前ら纏めて‥‥」
「星になれぇ!」
 剛政と梛織はよろめく二人をアッパーカットで空の彼方へと殴り飛ばす。
「まぁぁた、来年お会いしましょぉぉぉ〜」
 弧を描いて飛びながらエイプリルガイは消えていった。
 
〜叶わなかった約束〜
「来年くることはできそうにないな、おい」
 桑島は見回り中に偶然発見したプレミアムフィルム―『帰ってきた4月の馬鹿』―を桑島は拾いあげて呟く。
 2009年7月現在では魔法は消えてムービースター達はプレミアムフィルムに姿を代え、ムービーファンのそばからバッキーが消え去った。
「3年前と同じ生活になったんだが‥‥やるせねぇなぁ‥‥」
 二ヶ月ほど前、巻き込まれて変な格好にさせられた日のことが遠い昔のように桑島は感じる。
 もう、梛織も剛政もこの銀幕市にはいないのだ。
 桑島がプレミアムフィルムを撫でていると、携帯電話がけたたましくなりだす。
「おう、俺だ‥‥なに? コンビニ強盗がでたぁ? 場所は俺が近いのか‥‥わかった、今からすぐにいく」
 刑事としての仕事が舞い込み、黄昏る時は終わりを告げた。
 プレミアムフィルムをぎゅっと握り締め、桑島は現場へと走りはじめる。
「もし、あいつらが戻ってくるなら‥‥そのときは今より平和にしておきたいものだよなぁ」
 走りながら桑島は1人呟くのだった。


クリエイターコメントぎりぎりの納品となってすみません。

自分でも今年は出せなかったのですが、皆さんの方からリクエストが来て少し嬉しく思います。

過去の作品を読み直して凹んだりもしましたが少しでもいいものに仕上がっていればと思います。

現在の状況が状況でもありますので、桑島さんには締めヲやってもらう形になりました。

銀幕市での冒険はここまでですが、これからまたお会いできるような時がありましたらそのときは宜しくお願いします。
公開日時2009-07-13(月) 18:30
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